PLC異議申し立て電波監理審議会
    異議申し立て第11回審理
    (異議申立人側陳述人、青山、土屋氏、
     参考人、北川氏の主尋問・反対尋問)
    参加記

                    草野 利一

 平成21年10月7日総務省1001会議室にて開催されたPLC型式指定異議申立第11回審理について報告致します。当日の審理は約4時間にも及ぶ長時間の審理であり、本報告の内容に記憶違いや勘違い等が含まれている可能性がありますことを、お断りしておきます。

 今回は異議申立人側の参考人に対する主尋問と国の反対尋問が行われるとあって、傍聴者はPLCメーカー関係者等を含みいつもより多く、会議室はほぼ満席状態でした。

 我々は、国は全力で反対尋問を行うものと覚悟して万全の準備を進めてきたので、国側は代理人と指定職員2名と今までになく少数なのは意外でした。又、残念だったのはJARL技術課長に事前に今回の審理について説明し、ぜひ傍聴をして頂きたいとお願いしたのですが、当日は会合の予定があるということで傍聴していただけなかったことです。JARLは、国のPLC技術基準は問題ないとして賛成したのですから、PLC異議申立審理を傍聴する義務と責任があると考えます。

 定刻午前10時、佐藤主任審理官により開会が宣言され審理が開始されました。トップバッターは青山氏です。主尋問は村上弁護士が行いました。型通り陳述人の経歴、専門、アマチュア無線との関わり、そしてなぜPLCがアマチュア無線にとって問題なのかについての質問から始まりました。これらについては提出した陳述書に詳しく書かれています。近日中にWebにて公開致しますので、ここでは省略させて頂き、主尋問の一部のみを記します。

村上弁護士: 前回の審理で、PLCを使っているかについて聞かれて杉浦参考人が「使ってない、必要ない、ADSLを使っている」と答えたことについてどの様に感じましたか?

青山参考人; 杉浦氏はPLCの技術基準策定について重要な役目を果たした学者、研究者であるだけでなく、研究会の長だった方である。それなのに使ったことはないというのも問題だが、ADSLを持ち出したことで当日の傍聴者の間で失笑が出たほどだ。それはADSLは電話線を使った伝送方式であり、PLCとは全く別問題であるからだ。実務を殆ど考慮していないと思う。

村上弁護士: PLCにノッチが入っていることについては如何か?
青山参考人: メーカーは国の基準では強い妨害電波が漏れることを知っていて、問題化するリスクを避けたのだろうということは、製品を購入して実験した結果から明らかだ。

 次に、購入した各社のPLCモデムについての3個所での漏洩実験についてパワーポイントを用いて説明が行われました。審理官、国代理人、指定職員にとっては、初めて見聞きするPLCからの漏洩ノイズによる被害実態だったはずです。傍聴者からは、おーというどよめきの声が出るほどで、何んでこんなに酷いノイズ発生装置を電波環境課が型式承認を与えるのかという疑問が共有されたと思われます。実験では、50cm程度のロッドアンテナのポータブル短波ラジオで、PLCが設置された家から50mも離れてもノイズが聞こえるのですから酷いものです。11:10分、青山氏への主尋問が終了しました。

 11:15分からは2番手として土屋氏が国のPLC研究会が行った周囲雑音と漏洩電界強度についての測定の間違いについて陳述した点について、只野弁護士が主尋問を行いました。

 まず土屋氏の測定技術に関する高度な知識と経験、それに測定に用いた最高級の測定機器類についての質問と説明がありました。土屋氏が使用したベクトルシグナルアナライザーの価格は約1400万円もする日本でも数台しかないのではないかという測定器です。土屋氏の実験室は各種測定機器が並んで、さながら国家レベルの研究室状態で、傍聴者から感嘆の声が上がりました。

 土屋氏は、PLC研究会の周囲ノイズ測定で使用されたスペアナとANTでは微弱電界の測定は不可能で、測定器自体の下限値を周囲ノイズであるとしていることが明らかにしました。どうせ分からないだろうと言わんばかりに誤魔化し、実験報告しているのですから驚きであり、怒りを禁じ得ません。

 杉浦氏のPLC研究会は、住宅地における15MHz以下の周囲雑音を28dBμV/mとしたのですが、この値は、一般的なアマチュア無線用トランシーバーで14MHzをダイポールANTで受信した場合、SメーターはS9+20dB位を示します。全くとんでもんない雑音レベルではないですか!

 土屋氏のノイズ測定についての詳細報告も証拠として提出されていますので、こちらもWebで公開致します。11:55分参考人尋問が終了しました。ここで休憩です。

 13:15分、審理開始。今度は青山氏と土屋氏に対する国の反対尋問です。何を尋問するのかなと緊張します。しかし完全に肩透かしでした。国は我々の行った漏洩実験結果に対しては全く異議を唱えず、強い漏洩があることは認めたも同様です。反対尋問は本質とかけ離れた枝葉末節なことを質問しています。例えばいくつかの質問を記します。

国代理人: 青山氏の甲154号証と156号証は同じか?

青山氏: 基本的に同じだ。

国代理人: 写真に写っているアンテナと陳述書に記載されているアンテナのエレメント数と高さが違っているが?

青山氏; 記載違いである。確かめて正誤表を提出する。

国代理人: 短波放送を受信した時に使ったアンテナを示して欲しい。

青山氏: アマチュアバンドはノッチが入っていてノイズが低いので、アマチュア周波数に近い周波数の短波放送を受信して、ノッチが入っていない周波数での漏洩状態はどうかを調べた。例えば17MHz帯の短波放送は18MHz帯のアマチュア用アンテナを使った。

国代理人: アマチュア無線には高いアンテナが必要か?

青山氏: その人の目的によって異なる。

国代理人: 佐倉市での実験では短波のポータブル受信機のみで、成田市の756を使っていないのはなぜか? PLCモデムは1機種だけの実験はなぜか?

青山氏: 屋外で短波ラジオを使って漏洩状態を調べた。756も車に載せて使っている。協力者の家での実験で時間的制約があり、漏洩ノイズの低い物を選んで実験した。

 他にも色々ありますが、国の行った反対尋問30分間は殆どこの類の質問でした。

 続いて土屋氏への反対尋問です。

国代理人: CISPR22について問題があるというのか?

土屋氏: CISPR22は短波については何も決めていない。

国代理人: 横須賀の実験の場所は正確に述べられていない。

土屋氏: 協力者に嫌がらせ等の迷惑が掛かる恐れがあり、守秘義務があり場所の詳細は言えないが、写真、図で示すYRP近くの駐車場である。国の行った周囲雑音測定とほぼ等価な場所で測定値を確認した。 
 他にも色々ありますが、20分間の国代理人の質問も測定についての本質的な質問や異議は殆どありませんでした。

 最後に土屋氏が、杉浦氏はコモンモード電流と漏洩電界の強さが比例しているとしているが、実測では比例関係は認められず、杉浦氏の理論は破綻していると指摘して終わりました。

 14:06分、最後は大阪大学大学院教授北川氏の意見書に対する尋問です。全員起立して、北川氏の宣誓書読み上げを聞きます。偽証は罰せられますので厳粛な場面です。

 先ず只野弁護士が主尋問を行いました。この尋問はPLCの電磁波漏洩に関する技術論で、かつ1時間以上にもわたり、とてもメモできるものではなく省略致します。北川氏の陳述書もWebに公開予定です。ご覧下さい。15:12分終了。

 15:21分より北川氏に対する国の反対尋問が始まりました。この反対尋問に対する答えも、分かり易く説明していますが技術論で、とてもメモできるものではなく省略させて頂きますが、メモに残るいくつかを記します。

国代理人: CISPR22では漏洩を疑似電源回路ISN1で規制しているが、北川先生は電界強度で決めなければならないとしているのは何故か?

北川氏: 通信ポートにISN1が有効とするCISPR22がそもそも間違っていたのだ。昨年大阪で開催されたCISPR総会で指摘された。

国代理人: 周囲雑音で規制すれば、雑音は時間と場所などで異なるので規制を越えてしまうが?

北川氏: 空電の様に瞬間的な変動もあるが、平均すればそんなに大きな変化はない。

国代理人: コンセントから見たインピーダンス、LCLで周波数を変えて実験している。これではダメなのか?

北川氏: LCLを調べてもコモンモード電流を見ることはできず、無意味である。

国代理人: 家屋の配線でフォールデッドANTが発生する頻度はどうか? 場所はどうか?

北川氏: 実際の家では配線や分岐、スイッチが非常に多く、どの家でも100パーセントFDアンテナ状態は発生する。

 北川氏は反対尋問の答えの中で、この技術基準は早く見直すことだ。このままではメーカーも国民も被害を受けるし、電波監理者である国に対する信頼も低下するという趣旨の答えをしていました。14:45分終了しました。約20分間の反対尋問でした。

 最後に佐藤主任審理官からノッチについての質問があり、そして伊丹補佐審理官よりPLCと無線ユーザが現実的に共存できる解はあるのかという基本的な質問がありました。

 佐藤主任審理官が、職権でPLC機器の実地測定を電波法第92条の4に基づき電波監理審議会がPLC機器の放出する電磁波について検証を行うことにするとの指示がありました。推測するに、佐藤主任審理官は、国が定めた技術基準はどうも「おかしいぞ」と強い疑問を持たれたのでしょう。

 実地測定は審理官が選任した鑑定人の立ち会いの下、電波監理審議会が外部委託して、来年2月〜3月頃に行われる見込みです。双方は実験場所等について意見を述べるようにとのことで、次回審理(12月3日)において詳細が明らかにされます。

PLC行政訴訟事務局
JA1ELY 草野利一