PLC問題は終わっていない

                   JA1ELY 草野利一

 本誌でPLC問題を取り上げたのは2005年3月号が最初でした。同年1月31日総務省に「高速電力線搬送通信に関する研究会」が置かれ、2年前に終わったはずのPLC解禁の動きが再始動したのです。

 この時、推進側が再要望の理由として打ち出したのは、モデムからの漏洩低減技術が進んだこと、当面屋内使用を目指すの2点でした。推進側は2年前に比べて漏洩強度は24dB改善できたとしていましたが、今考えると改善とは法的根拠の無いノッチのことを指していたと思われます。

 その証拠に、商品として販売されたPLCモデムは、アマチュアバンドと日経ラジオの周波数はノッチにより有害なノイズは出ていません。しかし、ノッチ外の広範な周波数では強烈な漏洩ノイズが出ています。

 推進側もJARLも、ノイズは出ていたとしても誰からもクレームが無いから良いではないかという公害垂れ流しの屁理屈を並べたてています。

 国がPLC解禁の条件として定めたモデム内のコモン電流許容値は、ノッチ外の周波数で強力な漏洩ノイズを発生させます。即ちモデムの許容コモンモード電流値は明らかに過大なのです。

 解禁に当たってもう一つの詐欺的理論は、当初議論された電界強度による規制を、御用学者達が家屋内に張り巡らされた電線の影響調査に、分布常数回路とすべきところ極めて単純な集中定数回路としてシミュレーションを行って、電界強度論を電流規制論にすり替えてしまったことです。

 東北大学や電通大の学者達がいくら数式を並べて仰々しく証明しても、漏洩ノイズの存在を隠すことは不可能なのです。

 先月7月25日、総務省の情報通信審議会より「通信・放送の総合的な法体系について(中間論点整理)」に対する意見募集の結果が公表されました。この意見(パブコメ)に経済産業省の情報経済課より、あっと驚く要望が出せれていることが分かりました。

http://www.soumu.go.jp/s-news/2008/pdf/080725_3_3_04.pdf ]の最後のページに以下が書かれています。

3.新技術導入面での手続きの簡素化
 『屋内利用が前提となっている高速電力線通信(高速 PLC)が、防災や農業における生産管理などを狙いとし屋外でも積極的に活用できるよう、規制緩和を促進』


 おそらく経産省が経団連やメーカー側の要望を受け入れてのパブコメであろうかと思われますが、企業のあくなき貪欲さが如実に出ています。

 屋内使用に限定されているPLCに、屋外でのアクセス系が解禁されると、その影響ははかりしれません。光ケーブルを始めとしてブロードバンド化が進んだ都市部よりも、むしろ農村、田園地帯のように周囲ノイズの低い地域がノイズの海に変わってしまう事でしょう。

 PLCはもはや過去の事と手をこまねいていると、いつの日かコモンモード電流値の増大、そして使用周波数の50MHz帯までの拡大などの規制緩和に進むかも知れません。一旦国家権力が決めた事の反対活動の困難さは、PLC行政訴訟を始めてみて身に染みます。

 JARLハムフェアにPLCに関するブースが出展されます。ブース番号はJ-43です。PLCについての各種データ、実情を展示、説明致します。ぜひお立ち寄り頂きたいと思います。

 出典:月刊ファイブナイン 2008年9月号