ARRL(米国アマチュア無線連盟) 、
   BPL行政訴訟でFCC(連邦通信委員会)
   に勝訴!!


                  JA1IDY 青山貞一(武蔵工業大学教授)

 JA1ELY草野氏や筆者ら日本のアマチュア無線家とSWL は、今まで総務省(旧郵政省)を相手取り、PLC導入が短波帯の電波環境に甚大な影響をもたらすとして行政訴訟や異議申し立てを行ってきた。

 総務省やその背後にいる研究者らは、私たちが行う各種実験をもとにした積極果敢な対応の前にうろたえている。電子情報通信学会など「学術」にもインパクトを与えている。

 ところで、米国でも類似した行政訴訟が起こされている。米国には郵政省に類する連邦組織はなく、連邦通信委員会(FCC)が行政訴訟の被告となっている。原告は米国のアマチュア無線連盟(ARRL)である。

 この春、ワシントンDCにある地方裁判所(The US Court of Appeals for the District of Columbia Circuit)でARRLがFCCを訴えた裁判の判決がでた。

 判決はFCCが連邦行政手続法(APA)に違反しているという明快なものだ。主文のなかで、FCCは連邦行政手続法(APA)の要件である利害関係者に告示を行い意見を聴取する義務を果たしていないと述べている。判決の本文ではFCCが新たなIT機器(BPL)を制度的に社会に導入するに際し利害関係者であるARRL(原告)の意見を十分に聞かなかったとし、(行政)手続上の瑕疵、過失をもとに原告側勝訴を言い渡している。

 具体的にはFCCはBPLの導入に際し、既存の対策と連携した新たな防御対策によって有害な障害は防げると結論づけた。これに対しARRLはFCCが結論づけた制度改正は実質的、手続き的に免許を受けたアマチュア無線家の保護に失敗しているとしている。

 FCCはARRLなどアマチュア無線家の意見を聞かなかったという手続法上の問題だけでなく、米国通信法なる実体法(電波法)の第301項との関連において、BPL導入が短波無線に甚大な被害をもたらす可能性があるという原告の主張を認めており、さらに同法302項はAPAとは別に、FCCに対し制度改正による機器の導入が公共の利益と整合するよう製造者などに無線通信に障害を与えないこと周知させることとしている。

 さらにFCC規則第15項では「有害な障害」を明確に定義しているが、BPL 導入はそれらにも抵触する可能性を指摘している。判決本文は以下にあるので参照して欲しい。
http://pacer.cadc.uscourts.gov/common/opinions/200804/06-1343-1112979.pdf

 翻って日本にも行政手続法(1993年、平成5年11月12日法律第88号)がある。しかし、日本でこの法を利用している者の大部分は、事業者、業者である。たとえば建築確認申請が建築基準法の期日以内におりていないので早くおろせなど。国民、市民、NPOなどが行政手続法をあまり活用していないのが特徴である。

 これに対し米国の行政手続法(APA)は、私が生まれた1946年(昭和21年)に制定され、その後、国家環境政策法(NEPA)などの環境法はじめ、多くの手続法に法理を提供してきた。

 米国の環境団体、NGOさらにはハーバード大学ロースクール出身者らで組織された環境訴訟NPO、天然資源防衛委員会(NRDC)の弁護士は、APAを根拠に多くの環境関連訴訟を提起し、多くの成果をあげている。

 私たちはあくまで電波行政のもととなっている電波法(実体法)との関連で行政訴訟を起こしているが、日本の行政手続法を根拠に行政訴訟がどう起こせるかどうか別途検討してみたい。

 それにしても、日本と米国を対比するに、日本のアマチュア無線連盟(JARL)は恥ずかしい限りだ。国相手に訴訟を起こすどころか、早々と「PLCは問題ない」とし、その後は私たちに敵対している。ミッション(理念)、パッション(情熱)、アクション(行動力)のどれもない今のJARLに、ARRLがしてきたことを期待する方が間違っている。

 無線をこよなく愛する者が自ら社会正義を勝ち取る、これが私たちに課せられている!

出典:月刊ファイブナイン 2008年6月号「ハムの目」