PLC審理、主任審理官が
    技術基準の検証を提案!
      月刊ファイブナイン2009年11月号 

                青山貞一 JA1IDY
                東京都市大学教授

 8月30日に投開票された総選挙で国民の一票一票による投票によって、実質半世紀に及んだ日本の古い政治が幕を閉じ、官僚主導の政治から「脱」官僚主義、政治主導への幕が開いた。

 日本、イギリスの様な議院内閣制、また米国、韓国の様な大統領制を問わず、民主主義本来の姿は、国民から選ばれた議員により構成される立法府が行政府を統制することにある。

 しかし、我が国では永年、国民が選ばない官僚が実質的に立法をコントロールし結果として非常に歪んだ「政」「官」「業」「学」「報」による利権的な政治体制が支配的であった。「学」は御用学者、「報」は御用報道を意味する。

 政権交代後わずか2ヶ月しか経っていないが、行政や司法の分野にも潮目が現れている。

 たとえば、税金、公金の不正、不当な使用を理由に1都5県で起こされていた行政訴訟で3地裁で住民側が敗訴していた群馬県西部の八ッ場ダム事業は、国土交通大臣により工事の中止が政府により宣言され、同時に143に及ぶ国直轄のダム事業も中止が宣告された。

 政権交代の効果は立法、行政はもとより司法分野にも出ている。広島県福山市の景勝地、鞆の浦の景観をバイパス建設で破壊されることに反対する住民による差し止め訴訟が広島地裁で認められた。当たり前のように思えるが日本で最初の判決と言って良い。

 沖縄県の泡瀬干潟の埋め立てに反対する住民らの行政訴訟の控訴審でも差し止めが見られた。この様な事前差止の動きは今後、日本各地で拡大するものと思われる。

 ところで、我々が総務官僚によって電波法の省令が改悪されPLC型式指定されることに反対し、司法に救済を求めてから既に3年が経過した。我々は司法救済を求めたにもかかわらず、現実には総務省所管の電波監理審議会への異議申し立てという行政不服審査に押し戻されやむなく審理を続けてきた。

 その第11回目の審理が10月7日行われた。前回の審理では総務省側が立てた参考人である杉浦行氏への尋問が行われた。その反対尋問で杉浦氏は「あたなはPLCを使っているか」と聞かれた際、「使ってない、必要ない、ADSLを使っている」と答えた。

 これに象徴されるように国側の御用学者である杉浦氏が、実務レベルで何ひとつ分かっていない人物であるかが分かった。笑止千万である。

 今回は、アマチュア無線家側が立てた3人の参考人に対する主尋問と反対尋問が行われた。当日の審理は約4時間にも及ぶ長時間の審理であった。

 最初は原告でもある青山貞一である。青山はこの間、各地で行ったPLCの漏洩電界による受信障害実験を陳述。実際の映像と雑音を証拠として主任審理官に見せつけた。PLCを接続、稼働させることで甚大な障害が起きることを主任審理官はじめ総務官僚らは、初めて眼前で見せつけられたはずである。

 続いてやはり原告でもある土屋正道氏が国(総務省)側が証拠として提出してきた各地の漏洩電界の測定機器、測定方法がいかに根本的に間違ったものであるかについて陳述した。

 ご自身が行ってきた各地での実験との対比において具体的証拠を示しながら詳述した。

 3人目は大阪大学大学院の北川勝浩教授である。北川氏はEMCを専門とする研究者であり、この間一貫してPLC問題に理論と実際の両面で具体的に係わってきた論客でもある。

 北川氏は国が本来、電界強度で規制すべきところを電流で規制したことが致命的なものとなっており、技術基準を早く見直すべきことを強調した。

 申立人側が立てた3名の参考人によるワン・ツー・スリーの陳述を受けてか、第11回審理では尋問終了後、佐藤主任審理官は「実地測定をして技術基準を検証する」提案を私達に行ってきた。その内容は私達が当初より提案してきたPLCの漏洩電界測定の共同実験に類する提案である。

 一切安心は出来ないが、ひょっとすると、このような提案をせざるを得ないのも、日本が官僚主導から「脱」官僚へと政治が変わる潮目にあるのかもしれない。私達はこの提案に慢心することなく、本質的な問題解決に向け一層頑張らなければならい。