PLC異議申し立ての経緯と
    今後の展開について
      月刊ファイブナイン2009年5月号

                青山貞一 JA1IDY
                東京都市大学教授

 当初、東京地方裁判所への「差し止め」次いで「処分取り消し」で始まったPLC行政訴訟だが、東京地裁、東京高裁は、まずは電波監理審議会に異議申立しろとして原告側の提訴を却下した。

 その後、3月31日電波監理審議会を舞台に異議申立審理が行われ、現在まで総務省の会議室で第9回目の審理が行われた。その間、双方が提出した準備書面は申立人側が10本、国側が16本に及んだ。

 また次々に型式指定されるPLCに対し10回の異議申立を行ってきた。さらに双方が膨大な数の証拠を提出している。

 そのなかには理論面の国の誤りを指摘した学術論文とともに、異議申立人が各地で行った「漏洩電界による受信障害実験」や「漏洩電界測定実験」も含まれる。

 短波帯で聞こえていた放送が漏洩電波に埋もれて聞こえなくなる衝撃的な実験結果もある。

 審理には多くの技術的論点があった。とりわけ「周囲雑音」は重要である。総務省は放送波や通信波を何と「周囲雑音」と定義した。国側の定義に基づけば、通信波や放送波も「周囲雑音」と定義されることになる。これほど不可思議な話はない。

 肝心な今後の展開だが、ほぼ最終段階に入っている。7月22日の第10回目の審理で、国側が推薦する参考人として杉浦東北大名誉教授の尋問が、その後、申立人が推薦する北川大阪大大学院教授、青山東京都市大教授、土屋会社役員に対する尋問が行われる。

 言うまでもなく杉浦氏は国のPLC技術基準作成に深く関わった人である。上記4名への尋問終了後に双方が最終準備書面を提出し、佐藤主任審理官から判決に相当する判断が示されるであろう。

 ところで、過去9回行われた審議会審議は、準司法として行政内部で行われてきた。もとより申立人らは、行政が行う(行った)処分に対し「司法救済」を求めた。だが、現実は電波法を改正し型式指定を行った行政(=総務省)が所管する電波監理審議会で審理が行われることになった。
 形の上で準司法とされているが、現実には裁判長に相当する主任審理官は当初、総務省の課長級の役人。申立人が2度に渡り忌避申立てをすると、元横浜地裁判事の佐藤氏を指名した。

 佐藤氏は西本氏に比べ「まし」であったが、行司役を片方の力士が決めることには変わりがない。

 随所で総務省の意向にそう審理の展開が垣間見られた。きわめて遺憾である。事実、準司法の名の下で行われている行政不服審査制度のあり方が問題となっており、法改正が遡上にのぼっている。